- 1960年の創業以来、京都独特の佇まいを持つ町家を手掛けてきた『加藤工務店』。一つひとつの現場を丁寧に手掛け、施主が満足する仕上がりを徹底し、地域から厚い信頼を獲得。この道五十余年という熟練した技術を有する加藤正代表と、代表と同じく町家技術に熱い思いを抱く子息の加藤敏明さんにお話を伺った。
- 三ツ木
- 代表が大工の道を選ばれたきっかけからお聞かせください。
- 加藤(正)
- ある職人の仕事を見て「自分もこの道に進みたい」と思ったのがきっかけです。そのままその方に弟子入りし、経験を積んできました。その後、1960年に『加藤工務店』を創業。息子が生まれる直前のことだったので、いろいろと苦労はありましたが、一つひとつの仕事を確実にこなす姿勢を貫いてきました。今では、息子と一緒に現場を回っています。
- 加藤(敏)
- 父の背中を見て育ったため、大工の大変さを身近に感じていましたから「大工にだけはなるまい」と思っていたんです(笑)。ですから大学卒業後は広告関係の仕事に就き、イベント企画などに携わっていました。しかし、販売促進事業は約半年のサイクルで次々と手掛ける仕事の内容が変わってしまう。一方、大工の仕事は一生残る―――。そこに魅力を感じた私は、24歳で転身を決意。知人が営む工務店で8年程お世話になって経営などを勉強させてもらった後、『加藤工務店』に戻ってきました。
- 三ツ木
- それでは、詳しい事業内容を。
- 加藤(正)
- 住宅リフォーム、注文住宅新築工事などを手掛けています。当社では、京都の顔とも言える町家を主に扱っているんです。町家のほとんどが古い建物ですから、基礎をやり直すなどの工事は昔から多く手掛けてきました。今では町家の雰囲気を残しながら、快適な住環境を作り出すリフォームが中心となっていますね。
- 加藤(敏)
- 時代の流れと共に、ニーズも変化してきていると実感しています。
- 加藤(正)
- また、プレカット工法の普及により、町家技術を持たない大工が増え、全体的に職人が不足しているのも大きな課題。業界自体も変化しています。
- 三ツ木
- そういった流れの中で、今後はどのような展開をお考えですか。
- 加藤(正)
- 一つひとつの現場を丁寧に、着実に完成させていくだけです。信用と技術を第一にした仕事を大切にしていきたいですね。
- 加藤(敏)
- これからも木造建築の良さを、一人でも多くの方に知ってもらえるような仕事を追及していく構えです。受け継いできた施工技術を生かして、京都ならではの雰囲気が感じられる町家これからも携わっていきたいですね。
- 三ツ木
- 陰ながら応援しています。
- 「『施主様のために全力を尽くしています』と語る代表。その熱意はご子息にもしっかりと受け継がれていると実感しました。今後も独自性の高い価値観を大切にしたお仕事を貫いてください!」
三ツ木 清隆さん・談